観劇日記 体現帝国

体現帝国『授業』観劇

胡散臭い男達の合間をぬって黒カーテンを抜けると、ぼんやりの薄明かりの中に3人。

1人は天井から吊るされたロープに掴まり、膝で立っている黒服の男。

1人は貧乏なりにきちんとした服装をしてきました的な女の子が目隠しをして壁に寄りかかっている。

一際目を引くもう1人は椅子に座って片足を抱いている。髪はボサボサで半裸の身体中には無数の傷のような模様。


暗闇に映し出された3人がシンプルな舞台に際だっている。
会場に入った瞬間からわくわくする。絵をみているようだが絵ではなく、これから始まることへの少しの不安と、これに至るまで何があったのかという疑念が沸き上がる。


ポンっ!という音が合図だろうか、何度目かで女中が出てきて始まった。
青い髪に奇抜なメイク。当然のように客席に座る。

教授と生徒のやり取りで大量のセリフを話していたが、よく聞くと内容が面白い。教授は正論を言っているのに、生徒は理論を言って話が噛み合わない。女生徒が言うことは理に叶ってはいないが、一理くらいはあるかなと。

しかし4人目と女中が気になったので、大量のセリフは捨てて視覚に集中することに。

体現帝国というだけあり、4人目の身体能力にうっとり。
女中の仕草や表情にうっとり。
セリフよりも空気を伝えてくる表現力。


さて。
終盤、教授が女生徒を殺すとき。
女中がいても立ってもいられず、その様子を見にくる。その時の表情で全てわかった。妖艶な、欲まるだしの恍惚とした顔。思わず私も同じ表情になってしまい、そこで初めて気づく「女中は私なのだ」と。

女中が終始授業を覗いていたが、それは警告をするためではなく若い女が死ぬところを見たかったんだし、2人きりの授業で何が起こるのか見たかったのは私で。結局、覗いていたのは私だった。

 

やれ!と心のなかで期待して、生意気な生娘に教授がすることを好奇な目で覗いていたのは私自身だった。


悪夢の中にいて繰り返される悲劇。何度でも入りたくなる絵画。堕ちるには心地よく、後腐れなく戻ってこれるシンプルさ。


次作は打って変わって、愛のお話し。それにも期待して、待ってる。

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